大判例

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東京高等裁判所 平成2年(う)699号 判決

そこで,記録及び原裁判所で取り調べた証拠を精査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討すると,次の各事実を認めることができる。すなわち,タイのバンコクに滞在中のエリックが,大麻を日本に密輸入し,これを売りさばいて儲けようと企て,知り合いのスティーブとともに,平成元年10月1日ころ郵送し易いようにプレスされた3パックの大麻約2キログラムを買入れ,同月4日ころエリックがかつて日本に滞在中住んでいた埼玉県越谷市宮本町《番地省略》エリック・モア宛に国際郵便小包で郵送したこと,エリックとスティーブは,同月10日ころシンガポール経由で日本に入国して同所に赴いたところ,前記の郵便物を配達した際不在であったことを連絡する小包郵便物配達証が届いていたことから,同人らは越谷郵便局に出向いて先にバンコクから郵送した約2キログラムの大麻を受け取ったこと,エリックは,スティーブとともに同月15日ころかねて知り合いの被告人を訪ねて大麻の密売方を依頼したところ,被告人がその依頼に応じたため,被告人と密売価格や利益の分配方法等を交渉した上,同月24日自己の使用分を除いた1.7キログラム余の大麻を原判示の被告人方に持ち込み,同日夜から翌25日夕刻にかけて,被告人とともにパックされた大麻をほぐして種や茎を取り除き,更に鋏で細かく切り刻むなどして粉状にし,これをビニールの小袋に詰めて小分けし,約10グラム入り134袋,約5グラム入り75袋を作り,合計約1,715グラムの大麻を被告人方自室の押入れに隠して置いたこと,小分けされた大麻は,同月25日ころから平成2年2月17日ころまでの間に,エリック,スティーブらが密売するために逐次持ち出し,被告人も随時買い手を見つけては密売し,あるいは自己の使用分としてビニール小袋入りの大麻を小出しに持ち出しては費消していたところ,同月19日ころ,ガーナ人がマリファナで警察に捕まったらしいとの情報に接したため,自己の使用分として5グラム入りのビニール小袋2袋を残して,残余の約450ないし470グラムの大麻をトイレに流して処分してしまったこと,被告人は,手元に残した前記の自己使用分の大麻を自室内のテレビの微調整カバーの中に隠して置いて当座用として小出しに取り出し,その取り出した少量の大麻を自室内のスチール製の机の上に置いてあった靴箱の中にメモ紙に包んで隠して置いたところ,同年2月21日午後零時ころ警察官から大麻取締法違反の嫌疑で被告人方自室の捜索を受けた際,自己使用した残りの大麻が前記テレビの微調整カバーの中と前記靴箱の中から発見され,大麻所持の現行犯人として逮捕されるとともに,前記大麻が押収されるに至ったこと,及び押収された大麻の量が合計約4.136グラムであったこと,以上の事実を認めることができる。

前記の事実によると,エリックが平成元年10月24日被告人方に持ち込んだ合計約1,715グラムの大麻を,被告人がエリックとともにビニールの小袋に小分けし,被告人方自室内に隠して置いた事実が原判示第一の事実であり,被告人が現行犯逮捕された当時合計約4.136グラムの大麻を被告人方自室内に隠して置いた事実が原判示第二の事実であるところ,原判示第二の大麻約4.136グラムは,当初約1,715グラムあった原判示第一の大麻が,その後密売のため逐次持ち出されたり,自己使用のために費消されるなどして漸次その量を減じ,最終的には被告人が自己使用分として所持していたものであることが明らかであって,しかもその所持の場所は,隠し場所が押入れの中かテレビの微調整カバーや靴箱の中かの差異はあるにせよ,いずれも被告人方自室内であり,また,その所持の目的や態様も,原判示第一の大麻も密売のほかに適宜自己使用することの了解のもとに所持されていたものであるから,同第二の大麻の所持が,被告人の自己使用分としての所持になるとしても,エリックとの共謀による原判示第一の大麻の所持と,所持の目的,態様において,本質的な差異があるとまでは認められない。とすると,原判示第一と同第二の各大麻の所持関係を社会通念に従って全体的に観察し,かつ,大麻の所持罪はいわゆる継続犯として不法所持の終了時が犯罪の終了時であることをも併せ考えると,原判示第二の大麻の所持は,同第一の大麻の所持罪に吸収され,これと別罪を構成するものではなく,両者は包括して一個の所持罪が成立するに過ぎないものというべきである。

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